平均寿命が延びて、「人生100年時代」といわれる今日この頃であるが、喜んでばかりは居られない。老年医学からみると、平均寿命が90歳、95歳と延びていくと、人々が若返っているのは事実としても、それによって働く期間が延びつづけるわけではないのだ。認知症や要介護状態で生きる時間がそれだけ延びるということでもある。つまり、「人生100年時代」ブームにみられる、老と闘いつずけるという風潮には限界があり、ある時期からは、老いを受け入れ、老いとともに生きる必要があるということだ。さらに、人生の最後に至る過程では大きな個人差があり、それを著者は、知的機能・体力・経済力・社会的地位など、ものすごい格差があると言っています。
ただ、そうは言っても、70歳のころは、まだまだ、頭も体もシャキシャキしている人が多く、生活していく上での心がけ次第で80代以降も、元気な生活がおくれる可能性が高くなるのでしょう。
老化の影響は、人間の脳、特に前頭葉にあらわれるようです。「人生100年時代」を生き抜くためには、脳をなるべく長持ちさせたり、仮に認知症になったとしても、その進行を遅らせるための方策がより重要になってくるとのこと。前頭葉の機能を若々しく保つためには、様々なことを、ただ鵜呑みにするのではなく、疑ってみるという姿勢が重要だ、と著者は言います。テレビを見ていて、「そうだったのか!」と感心しているだけでは老後は心配だと言います。昔はよく、中高年や老人が、テレビを見ながら、放送内容に突っ込みを入れていたが、そういったことは、脳にとってはとてもいい行為だそうです。「そんなわけないよ」、「別の見方をしたらこうだろう」と自分なりの意見を思考することが、前頭葉の機能維持には大変効果的だそうです。
そして、70代になると、体のすべての臓器の能力が落ちてくるそうです。必要性があると必ずしも言い切れないような治療や手術を行って、結果的にQOL(生活の質)を落としてしまうことはよくあるとのこと。そうならないためには、長生きできるか、或いは自分がのぞむような晩年を生きられるかという観点から、医師の言うことを自分の頭で考える習慣をつけよう、と言います。
アンチエイジングなどにより寿命が延びることは、良いことずくめだと思っていたのです。しかし、寿命が延びることによって働く期間が延びるだけでなく、認知症や要介護状態で生きる期間も、それにつれて延びる点は、以外でもありショックでもありました。また、私は、人の言うことを鵜呑みにするインプット型の人間であることから、自分の意見をもったアウトプット型の人間に代わっていくことも必要であると思いました。
人生「100年時代」と言っても、すべての人が元気で長生きできる訳ではないようです。人それぞれに、健康状態や、生活レベルには差があり、そこには大きな格差があるというのが現実なのです。そして、例え認知症になっても、また要介護状態になっても、会社や国が助けてくれるわけでもないのです。こういった老後の現実をふまえて、まだまだ余裕のある70代のうちに、将来に備えることが必要でしょう。