人は、それぞれに違った人生を送る別人であるが、すべての人に共通するところもある。それは、すべての人が、やがて、死んでゆくという点である。そこで二つの道に分かれる、と和田秀樹さんは言います。一つは、幸せな道であり、「最後に、いい人生だった、ありがとう、と満足しながら死んでいける道」もう一つは、不満足な道であり、「ああ、あの時に、とか、何でこんなことに、と後悔しながら死んでいく道」です。そして、「80の壁」を超えていくには、たった一つの考え方に集約できるとのことです。それは、老いを受け入れ、できることを大事にする、という考え方であり、これが「幸せな晩年」と「不満足な晩年」の境目になるとのことです。
 「80歳からの人生は、70代とはまるで違ってくる」と著者は言います。自分の老を受け入れつつ、まだこれはできる、あれも残っている、と「あるある」を大切にしながら生きるほうが幸せというのです。世間の常識では「ガンは死に至る病で、早期発見・早期治療をすべき」とされているが、実際は、本人が気ずかないガンもあるし、生活に支障のないガンもある。と言うのです。とくに年を取るとガンの進行が遅くなるため、放っておいても大丈夫なケースは意外と多い、とのことです。また、認知症も必ずやってくるのだから、今のうちにしたいことをしておいたほうが良いとのことです。認知症は、病気と言うより「老化現象」に近いものであり、年を取ると誰にでも起こる症状なのです。むしろ、新しいことや好きなことをすることによって、認知症の発症を遅らせることは可能だというのです。
 人間は意外に強く、認知症になっても、一人暮らしができるのは面白いところである。「楽しいな」とか「面白そうだな」と思ったら自分にブレーキをかけず、どんどんやってみるのも有りなのだろう。年を取ると、筋力や臓器だけでなく、脳も老化します。認知症はそうした老化現象の一つなのでしょう。そうした中で、ムリをやめる(むりして薬を飲む、食事を我慢する、興味のあることを我慢する)、そして、やりたいことはどんどんやる。そうすることで、脳は活性化し、体も元気になるのではないでしょうか。
 自分の人生をふりっ帰ってみて、とかく仕事や生活優先でやりたいことも我慢したような記憶があるのですが、年老いてからもそのような生活を続けると、老け込む一方で幸せからは程遠い人生になってしまうのではないでしょうか。若い時から、そして年老いてからは特に、やりたいこと、好きなことをやって生きるのが、大事なのではないか、と思います。そのような生き方をすることによって元気に長生きできるのではないかと思います。
 80歳を超えて元気に長生きするには、今あることや今できることを大切にして生きるのが大事である。そして、やりたいことはやって、やりたくないことは無理しないこと。認知症やがんを老化現象ととらえ、現状を受け入れながら方策を立て、深刻にとらえすぎないで生きる。「80歳の壁」は、そのような生き方をしたい人、或いはそのような生きかたを親御さんにしてもらいたい人にお勧めしたいと思います。